Method of predicting psychological impressions for random noise based on spectral distance

1. はじめに 情報伝達の最も基本的な手段の一つに音声信号 の直接的な伝達がある.この場合,聴取者が雑音 に悩まされることなく,音声聴取に専念できる快 適な音場を実現することが重要である.そのため には,音声信号と外来雑音の各パワースペクトル 形状に関する相対的関係とそのときに生じる雑音 に対する心理的印象との関連性を定量的に事前に 把握しておくことが重要となる.他方,上記の関 係を定量化するとき,聴取者が示す雑音に対する 心理的印象はあくまで人間の主観的判断に基づい たものであり,感覚的応答に対する言語表現その もののあいまいさや,人間の主観的判断に不可避 的に付随するあいまいさを考慮することが必要と なろう. このような観点から本研究では,講演や放送な どの音声聴取といった精神活動を行っている人間 に対し,無意味ランダム雑音がどのような心理 的影響を与えるかをファジイ理論を用いて考察 する.具体的には,音声信号と外来雑音の振幅・ 周波数特性に関する相対的関係を考慮したスペ クトル距離 1) を台とする ”うるささ” 2) に関す る心理的印象のメンバシップ関数をまず設定して いる.次いで,このメンバシップ関数を用いて, 様々な周波数スペクトル形状を有する男性や女性 の音声信号を聴取している場合に,任意のパワー スペクトル形状の無意味ランダム外来雑音が侵入 してきたとき,この雑音に対して聴取者がどのよ うな心理的応答を示すかをファジイ確率の形で予 測し,室内心理実験による実測データから求めた 実測値との比較を行っている.