Development of a Comprehensive Disaster Scenario Simulator that Considers Level of Damage and the Timeframe of the Disaster

平成 16 年 10 月に近畿・四国を中心に甚大な被害を もたらした台風第 23 号や 50 名を越える死者を出した 新潟県中越地震,そして,インド洋周辺各国に 20 万人 以上にも及ぶ津波犠牲者もたらしたスマトラ島沖地震 など,近年において,これまでの想定規模を超える災 害が多発している. このような状況の中,災害常襲国であるわが国にお いては,様々な災害による被害を最小に抑えるための 効果的な対策の実施が急務となっている.しかし,実 際の防災対策が遂行される自治体などに目を向けて見 ると,防災対策の基本方針を定めるための被災シナリ オ想定やそれに基づく防災計画の立案に加えて,災害 を防ぐ各種ハード対策施設や住民に対する情報伝達施 設,避難路や避難施設など様々な防災対策施設を整備 する必要に迫られている.さらに,近年では地域住民 の防災意識改革の必要性が認識され,そのための教育 活動を実施しなければならないなど,地域の防災担当 者に求められる検討項目は膨大であり,限られた予算 と時間の中で効果的で効率的な防災対策を立案し,推 進していくことは非常に困難な状況となっている. 本研究では,現状の防災対策に見られる以上の様な 問題に対するシミュレーション技術の有用性を認識し, 発災時刻を始めとした各種シナリオ想定に基づき被災 時の地域状況を表現するシミュレーションモデルを開 発した.このシミュレーションモデルは,平常時に見 られる生活行動や災害時における避難行動などの住民 の活動状況に加えて,津波や洪水などの災害現象の進 展状況を具体的に表現し,それらに基づいた被害の発 生状況を推計するなど,被災地の都市アクティビティ を考慮した総合的な被災シナリオの想定が可能となっ ている.また,本研究では,オブジェクト指向プログ ラム言語を用いてシミュレーションモデルを簡潔に実 装するとともに,計算状況を視覚的に表示するための プログラムや GUI を構築することによって,シナリオ 設定や計算の実行,そして結果の閲覧というシミュレ ーションの実施に必要な一連の作業を一般的なソフト 抄録:災害時の被害シナリオ想定やそれに基づく防災計画の立案,そして災害情報の伝達戦略や 避難誘導戦略の検討など,効果的な防災対策を実施するためには様々な検討が求められる.この問 題に対し筆者らは,災害時の地域状況を総合的に表現するシナリオ・シミュレータを開発した.こ のシミュレータは,平常時における住民の生活行動と災害時の対応行動を考慮することで,発災時 刻に応じた被災状況を表現可能であることから,的確な防災対策を検討する戦略策定ツールとして 利用できる.また,本シミュレータは,任意シナリオによる計算状況を視覚的にわかり易く表現す ることから,災害現象や災害時の的確な対応行動を学ぶためのリスク・コミュニケーションツール としても有効である. Abstract: In order to execute effective disaster measures it is therefore necessary to examine various problems such as damage assumption, warning transmission strategy, and evacuation plan, etc. The purpose of this study is to develop a Comprehensive Disaster Scenario Simulator that expresses a regional situation during a disaster in order to manage these problems. This simulator expresses resident's activities in normal circumstances and the evacuation behavior during a disaster. It can also express the extent of damage and casualties with the time of occurrence of the disaster. Therefore, the use of this simulator can be twofold: One as a strategy tool to examine effective disaster prevention measures. Two, because of its visual presentation and easy-to-use interface, this simulator can be used as a risk communication tool to learn about various disaster phenomenon and appropriate actions to be taken to reduce the impact of disasters.